「實方」
みちのくを旅する西行法師の前に、歌の道の先達、藤原実方中将の霊が現われる。昔、賀茂の祭で、冠に竹の葉を挿して舞って賞賛されたことを語って姿を消す。西行が仮寝していると、実方の霊はありし日の雅な姿を見せ、静かに舞を舞う。水鏡に姿を映し、しばし、美しかった若き日にみずから陶酔する。しかし、現実の老衰の身はいかんともしがたい。ときならぬ雷鳴のなか、枯れ野のかなたへと去って行く。
堂上歌人の回想に表れた自負と失意。老体の序ノ舞を通しての幻想から幻滅への推移。世阿弥の異色作。昭和六十三年に金春流が復活上演して以来、三十二年ぶりの再演である。
「正尊 働キ入り」
頼朝は、梶原景時の中傷により義経の忠誠心に疑いを抱き、義経を暗殺すべく、ひそかに土佐坊正尊を都に向かわせる。義経と弁慶はこれを察知し、正尊を召し寄せ、上京の目的を問いただす。正尊は熊野詣でのためと偽り、敵意を持たぬことを誓った起正文を書いて弁慶に渡す。弁慶がこれを読み上げる。一応その場を切り抜けた正尊だが、じつは夜襲を準備していた。義経と弁慶は正尊を迎え討ち、捕縛する。
聴きどころは起請文、見どころは義経方と正尊方の熾烈な戦い。
〈働キ入リ〉の小書により長刀や太刀を駆使して、華やかな斬り合いの型が展開する。シテ弁慶とツレ正尊は互角に対立し、義経と静御前も最後まで活躍する。観世弥次郎長俊作の劇能。
羽田 昶
<日時> 令和2年 2月11日(火・祝)
13時開演 (12時 開場)
<会場> 於:国立能楽堂 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
中央・総武線 千駄ヶ谷駅下車 徒歩約5分
大江戸線 国立競技場駅下車 A4出口から 徒歩5分
副都心線 北参道駅下車 出口1から 徒歩7分
<番組>
能「実方」
シテ(前/老翁 後/藤原実方) 高橋忍
ワキ(西行法師) 宝生欣哉
間(所ノ者) 山本則秀
笛 一噌隆之
小鼓 大倉源次郎
大鼓 安福光雄
太鼓 桜井均
後見 櫻間金記
金春穂高
地謡 金春安明 金春康之 金春憲和 辻井八郎
井上貴覚 本田芳樹 本田布由樹 中村昌弘
狂言 「地蔵舞」 シテ 山本東次郎 アド 山本則俊
独吟「六元」 金春安明
仕舞「弓八幡」 金春穂高
仕舞「杜若キリ」金春憲和
地謡 山中一馬 佐藤俊之 本田布由樹 政木哲司
仕舞「箙」 安達裕香
仕舞「笹ノ段」 長谷川純子
地謡 岩松由実 村岡聖美 柏崎真由子
林美佐 中野由佳子
能「正尊 働キ入リ」
シテ(弁慶) 山井綱雄
ツレ(正尊) 辻井八郎
トモ(姉和光景)井上貴覚
子方(源義経) 山井綱大
子方(静御前) 金春初音
立衆(正尊の家来) 大塚龍一郎
立衆(正尊の家来) 萩野将盛
立衆(義経の家来) 本田芳樹
立衆(正尊の家来) 中村昌弘
間(侍女) 山本凜太郎
笛 槻宅聡
小鼓 田邊恭資
大鼓 國川純
太鼓 小寺真佐人
後見 横山紳一
政木哲司
地謡 本田光洋 吉場廣明 金春穂高 山中一馬
佐藤俊之 本田布由樹 中村一路 渡辺慎一
終演予定 十七時半頃
<入場料>
S席●12,000円 A席●10,000円
<チケット取扱い・お問合せ>
山井綱雄事務所
Tel 070-6526-0270 (受付時間 平日10:00~18:00)
Mail:info@tsunao.net